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「クリエイティブコンサルタントの思考の技術」の要約と批評

著者:ケヴィンダンカン、花塚恵(訳)
出版社:かんき出版
出版日:2015年03月06日

アイデアを出す前に目的を明確にする

アイデアを出すときには、まず「何を達成したいか」「なぜ達成したいか」をはっきりさせることが重要です。目的が曖昧なまま計画を始めてはいけません。

方法とメンバーを決める

目的が決まったら、アイデアを出す「方法」と「人」を決めます。1人で解決できる場合はそれでも構いませんが、複数人が必要なら、目的の伝え方や話し合いの進め方を考えます。
ブレインストーミングは4人程度が最適で、最大でも8人までにすると良いでしょう。メンバー選びは慎重に行います。

ミーティングの準備を整える

メンバーが決まったら、ミーティングの場所と時間を工夫します。自宅やオフィス以外の「サードプレイス」を使ったり、月曜の朝や金曜の午後を避けたりするのが効果的です。
ミーティングは短時間で集中できるよう、30分単位で設計すると良いでしょう。また、退屈させない工夫として意表を突く質問をすることも有効です。

参加者にも事前準備をさせる

参加者が思いつきで話さないよう、事前に宿題を出しておくと効果的です。テーマを理解したうえで参加でき、議論の質が高まります。

ミーティング冒頭で否定的な意見を引き出す

議論が途中で脱線しないよう、あえて最初に否定的な意見を出してもらうのが有効です。
商品やプロジェクトについて「悪い点と良い点をそれぞれ3つ」挙げてもらい、進行役が意見を整理します。これによりテーマ理解度が把握でき、良いアイデアの材料が得られます。

制約を意識してアイデアを出す

まず、あらゆる制約を確認し、参加者に共有します。制約があることで、想像力を働かせながら現実的なアイデアを生み出せるようになります。非現実的な案を減らす効果もあります。

視点を変えて考える

他分野の専門家ならどう考えるか、子どもや動物の立場ならどうするかなど、視点を変えることで新しい発想が得られます。
さらに、写真やランダムな言葉、最新の流行を刺激にするのも効果的です。偉大なアイデアは周囲のヒントから生まれることが多いものです。

アイデアが出ないときの工夫

それでもアイデアが出にくいときは、言葉遊びや組み合わせの発想法を試してみましょう。
例えば、各自が「名詞・形容詞・動詞」を1つずつ出し、それを組み合わせて新しい発想をする方法があります。
また、部屋を歩きながらキーワードをもとに連想語を書き足していく方法も効果的です。動きながら考えることで発想が活性化します。

アイデアを磨き込む前に深く調べる

まだ検証していない段階でアイデアを薄めてはいけません。必要なら、アイデアが生まれた段階まで遡り、オリジナルの形で再評価します。

採用するアイデアを選ぶ

十分な数のアイデアが出たら、投票で進めるものを決めます。上位3つに投票するなどの方法が有効です。
最終的に採用する際は「これは本当に良いアイデアか?」と全員に問い、賛同が得られないものは時間をかけすぎないようにします。

アイデアを評価・分類する

多くのアイデアは「イマイチ」「見込みあり」「期待大」などの軸で分類すると整理しやすくなります。
「目的との一致度」や「実現可能性」で評価するのも効果的です。評価が低いアイデアでも、改善を加えることで価値が見直されることがあります。

実現可能性を検討する

アイデアの実行に向けて、まず自社がどれくらい冒険を許容できるかを考えます。保守的な文化なら冒険度を下げる必要があります。
さらに、実行を妨げる障害をリスト化することで、事前に対策を立てられます。

事前に失敗を想定して検証する

アイデアが1年後に失敗したと仮定し、その経緯を想像してみます。これにより、致命的な欠陥を事前に見つけることができます。

モチベーションを管理する

アイデアを実行するには、関係者のやる気を保つことが欠かせません。モチベーションは「自律性」「熟達」「目的」の3要素に基づいて高めることができます。

複数のアイデアを優先順位づけする

実行したいアイデアが複数ある場合は、実現可能性や「緊急度」「重要度」で順位をつけると良いでしょう。

実行計画を立てて共有する

実現までのステップをリスト化し、「誰が」「何を」「いつ」「どこで」を明確にします。長期的なプロジェクトでは、段階ごとに優先度を分けた実行プランを作成すると分かりやすくなります。

計画を継続的に進める

方向が決まったら、一貫性を持って進めましょう。探検家アムンゼンのように、どんな状況でも一定のペースを守ることで目標達成に近づけます。

批評

良い点

本書の最大の魅力は、アイデア創出から実行までのプロセスを一貫して整理している点にある。単なる発想法の紹介ではなく、「目的を定める」「適切なメンバーを選ぶ」「効果的なミーティング環境を整える」といった準備段階から、アイデアを評価し、実行に移すための具体的な手順までが詳細に書かれている。特に、ブレインストーミングの最適人数を4~8人とする指摘や、会議の時間を30分単位で設計するという実践的なアドバイスは、すぐに取り入れやすく説得力がある。また、意表を突く質問やランダムな言葉を使う、立って動きながら発想するなど、創造性を刺激する工夫が豊富に紹介されており、現場での応用がイメージしやすい。

悪い点

一方で、本書は情報量が非常に多く、全体の流れがやや冗長に感じられる部分がある。アイデア創出から実行までを網羅している分、重要度の低いテクニックや細かいケーススタディが続く箇所では、読者が本質を見失いかねない。また、理論的な裏付けや心理学的な背景が十分に語られないまま「〜すべき」という指示が多い点も気になる。例えば「月曜朝や金曜午後は避ける」「制約がある方が良い」といった助言は実務経験に基づいているのだろうが、その根拠やデータがもう少し示されると信頼性が高まっただろう。さらに、組織文化や意思決定構造が複雑な現場においては、提案されている手法がそのまま通用しない場合もあるため、適用範囲の限界について触れていないのは惜しい。

教訓

本書から得られる大きな教訓は、「良いアイデアは偶然ではなく、計画的な環境づくりから生まれる」ということだ。目的を曖昧にしたまま集まっても、創造的な成果は得られない。逆に、目的の明確化、制約条件の提示、参加者の事前準備、会議時間の最適化といった仕掛けを施せば、アイデアの質は大きく変わる。また、アイデアは出すだけでなく、検証・分類・選別・改良といったプロセスを経ることで実行可能性を高める必要があると学べる。さらに、実行段階ではモチベーションを維持するための「自律性・熟達・目的意識」という要素が重要であるという指摘も、チームマネジメントに携わる読者にとって有益だ。

結論

総じて、本書は「発想力を鍛えたい人」だけでなく、「チームでクリエイティブな成果を出したいリーダー」にとって有用な実践書といえる。単なるアイデア発想法の寄せ集めではなく、組織やプロジェクトの現場でそのまま応用できる戦略的な指南が多く含まれている。構成の冗長さや根拠の不足といった弱点はあるものの、行動指針を得たいビジネスパーソンには十分な価値がある。特に、目的設定から実行までの一貫したプロセスを学びたい人にとっては、豊富な手法と具体的なアクション例が、実務の質を高める良き道標となるだろう。