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「伝わるWebライティング スタイルと目的をもって共感をあつめる文章を書く方法」の要約と批評

著者:ニコル・フェントン、ケイト・キーファー・リー、遠藤康子(訳)
出版社:ビー・エヌ・エヌ新社
出版日:2015年07月17日

良質なコンテンツの3原則

良質なコンテンツは「わかりやすい」「役に立つ」「親しみやすい」の3つが基本です。テーマを十分に理解したうえで、できるだけ少ない言葉で簡潔に書くことが大切です。ライターは常に「新しい情報を提供できているか」を自問し、的確な言葉やトーンを選び、読者の共感を得られるよう工夫しましょう。

ライティングの基本ステップ

  1. リサーチ:テーマやターゲット読者のニーズを把握する。
  2. ゴール設定と計画:何を目指して書くのか、完成までの計画を立てる。
  3. 執筆と見直し:誤字脱字や矛盾を確認しながら文章を仕上げる。
  4. 発信後の改善:公開後も修正を重ね、より良いコンテンツに磨き上げる。

好奇心とフィードバックを大切にする

読者が実在の人間であることを忘れず、好奇心を持って書きましょう。さらに同僚や読者からのフィードバックに耳を傾け、文章に反映させることで品質を向上させられます。

リサーチとインタビューの重要性

入念なリサーチで「誰のためのコンテンツか」「ゴールは何か」を明確にします。その後、同僚やクライアントにインタビューを行うと、共通理解が得られ、適切な専門家を見つけやすくなります。質問は自然な流れになるよう準備し、リラックスした雰囲気で話を引き出しましょう。

読者像とミッションステートメントを定める

読者がどのような人かを具体的に想定し、どの方向に導くかを考えます。そのうえで、プロジェクトの方向性を示すミッションステートメントを作成しましょう。外部向けの宣伝文句ではなく、内部メンバーの指針となるメッセージにするのがおすすめです。

コンテンツタイプと構成を決める

ゴールが定まったら、伝える内容に最適なコンテンツタイプ(ブログ記事、マーケティングコピーなど)を選び、アウトラインを作成します。おすすめは「モジュール・ライティング」です。ページを部品ごとに分けてワイヤーフレームのように整理すると、構成を柔軟に組み立てられます。

わかりやすく簡潔な文章を書くコツ

専門用語は定義や説明を添え、シンプルな文章を意識します。読者が起こすべき行動は正確に説明し、用語は統一しましょう。文章は短く、肯定文を使うと読みやすくなります。

誠実さと読者への思いやりを持つ

正確な事実を示し、主張には具体例や根拠を添えましょう。礼儀正しくオープンなトーンを心がけ、読者の立場で書くことが大切です。

執筆と推敲の習慣を持つ

執筆と推敲は同時進行せず、書いた文章を何度も見直しましょう。一晩寝かせて翌日に読み返したり、第三者からフィードバックをもらうのも有効です。異なる環境で読み直すと新しい発見があります。

企業の「声(ボイス)」を確立する

企業の声は、その個性や文化を表す重要な要素です。お客様第一の姿勢を持ち、人間味のあるメッセージを発信しましょう。CEOや創業者へのインタビューは、感情のこもったブランドストーリーを見つけるのに役立ちます。

適切な口調を選ぶ

コンテンツの種類や読者の感情に合わせて口調を変えます。例えば、エラーメッセージではシンプルでまじめに、ブログではフレンドリーに。音読してしっくりくるかを確認するのが効果的です。

コミュニティーを構築する

熱心な読者を集めるには、読者が関心を持つサイトや検索ワードを分析しましょう。ブログを活用し、「売り込み」ではなく有益な情報を提供することが大切です。コメントやメールへの返信を欠かさず、つながりを維持しましょう。

エディターと良い関係を築く

エディターは読者視点で原稿を整理・改善する役割を持ちます。ライターの声を尊重しつつ、ガイドラインを共有し、建設的なフィードバックを心がけましょう。共通のゴールと読者ニーズに沿った方向性を一緒に目指すことが重要です。

批評

良い点

本書の最大の魅力は、ライティングを「感覚」や「センス」ではなく、体系的なプロセスとして捉えている点にある。リサーチから始まり、ゴール設定、計画立案、執筆、推敲、発信後の改善までを段階的に示すことで、初心者でも実践しやすい。特に「わかりやすさ・役立つ・親しみやすさ」というコンテンツの3原則は、シンプルでありながら本質的だ。さらに、ミッションステートメントの重要性や、ブランドの「声」を定義するための具体的なヒント(「○○だけれど、××ではない」リストなど)は、実務の現場ですぐ活用できる実践知となっている。インタビューの方法論や、エディターとの協働のポイントなど、ライター以外の関係者との関わり方まで掘り下げている点も秀逸だ。

悪い点

一方で、本書にはいくつかの弱点もある。まず、情報量が非常に多く、章ごとの重点がやや散漫になりがちだ。リサーチやミッションステートメント、ブランドの声づくりなど多様なテーマを扱うが、各要素の関連性や優先順位が明確に整理されていない印象を受ける。結果として、初学者には「どこから手をつければよいのか」がやや分かりづらい部分がある。また、理論やプロセスの説明は豊富だが、具体的な成功事例や失敗例がほとんど示されないため、読者が自分の状況にどう当てはめればよいか判断しにくい。さらに、Webライティング以外の媒体(書籍や広告など)に応用する際の視点がやや欠けており、汎用性の面で物足りなさを感じる読者もいるかもしれない。

教訓

本書から得られる最も大きな教訓は、「良い文章は偶然生まれるものではなく、戦略と継続的な改善の結果である」ということだ。読者像を具体的に描き、ミッションステートメントで方向性を定義し、適切な口調やブランドの声を磨くことで、単なる情報発信が「価値のあるコミュニケーション」へと昇華する。また、ライティングは孤独な作業ではなく、編集者や同僚、読者との対話を通じて成長させるべきものだと教えてくれる。さらに、文章は書いた瞬間に完成するのではなく、何度も推敲し、第三者の目を通すことで初めて洗練されるという姿勢は、すべてのクリエイターに通じる普遍的な学びといえる。

結論

総じて本書は、ライターが「良質なコンテンツ」を作るための包括的なガイドブックである。体系的なプロセスや実践的なチェックポイントが豊富に示されており、特に初心者から中級者のライター、あるいは企業のコンテンツ担当者にとって有用だ。ただし、情報の整理不足や事例の少なさは、理解のハードルをやや高くしている。読みながら自分なりに要点をまとめ、まずは基本のプロセスを一つずつ実践することで、本書の価値は最大限に引き出せるだろう。感覚頼みのライティングから脱却し、戦略的かつ読者志向のコンテンツを目指すすべての人に、一読の価値がある一冊である。