著者:浜口隆則
出版社:かんき出版
出版日:2015年05月18日
お金への不安をなくすために
起業時に最も不安を感じやすいのは「お金のこと」です。これを払拭するには、稼ぐ力を身につけることが必要です。経営者になれば、リアルな数字を把握し、管理する力が必須となります。今のうちから家計簿をつけ、収支を意識する習慣を持つと良いでしょう。
投資センスと値決めの重要性
お金を使う際には「どれだけのリターンが見込めるか」を考え、投資感覚を養いましょう。買う前に価格と価値を見極める習慣は、将来、商品を提供する側になったときにも役立ちます。値決めは経営戦略の要であり、「お客さんが喜んでくれる範囲内の最高の値段」を設定する練習が必要です。
大きな収入を受け入れるマインドセット
大きな収入を得ると不安感や罪悪感を覚えることがありますが、これは会社の成長を妨げる原因となります。成功している起業家の収入を知り、「もっと稼いでもいい」と思えるマインドを持つことが大切です。
失敗を恐れない姿勢を持つ
成功する起業家は、失敗を「よい結果を得るためのプロセス」ととらえます。失敗を恐れず行動できる姿勢が重要です。
リスクを正しく考える
起業家はリスクテイカーである必要があります。行動するリスクだけでなく、行動しないリスクも考えましょう。理想の未来から逆算してロードマップを描き、起業までの具体的なステップを明確にすることが成功への近道です。
経営を仕組み化する
経営者の仕事は「3年後に会社が生き残っている理由」をつくることです。創業当初は自分が動く必要がありますが、いずれは自分が動かなくてもビジネスが回る仕組みを考えなければなりません。
安全基地をつくる
挑戦を続けるためには、安全基地の存在が重要です。自分自身を受け入れたうえで、万が一失敗しても立ち直れる数字的な目安を持っておくと、行動のハードルが下がります。
ビジネスアイデアを生み出す力を鍛える
ビジネスは「困りごとの解消業」です。街を歩くときもアンテナを張り、アイデアを集めましょう。すでにうまくいっているビジネスを参考にするのも効果的です。創造力は外から得た情報の組み合わせによって生まれることを意識しましょう。
適切な問題をつくり出す力を磨く
経営者には、与えられた問題を解く力ではなく、適切な問題を発見・設定する力が求められます。日常の中で現実を問題視する視点を養うことが大切です。
集客力を高める
集客は事業の生命線です。人脈リストを作っておくと、起業時の最初の仕事につながりやすくなります。ウェブを活用し、自社を魅力的に見せる方法や検索上位を狙う知識も身につけましょう。
人脈を活用する
起業において「誰を知っているか」は大きな価値となります。人脈リストを作成し、未来の関わり方を考えておきましょう。苦手な分野はパートナーを見つけて任せることも効率的です。
信頼関係を育む
事業を継続するためには、構築した人間関係をこまめにフォローする必要があります。定期的な連絡や有益な情報の共有を意識し、接点を増やすことで好意を得ましょう。
信用力を高める
選ばれ続ける起業家になるには、信用が不可欠です。挨拶・身だしなみ・時間厳守といった小さな約束を守る習慣を身につけましょう。会社の看板がなくても信頼される行動を心がけることが大切です。
経営を学ぶ
経営を理解するには、まず経営書を読みましょう。商品力・営業力・管理力の3つを掛け合わせることで経営力が育ちます。成功しているビジネスを分析する習慣も重要です。
事業計画をつくる
アイデアを事業計画書に落とし込みましょう。収益やコストのシミュレーションを行うことで実現可能性を確認できます。資金調達や協業を依頼する際にも有効です。
プレゼン力を鍛える
起業すると、人前で自分や商品を語る機会が増えます。要点から話す習慣をつけ、相手のメリットを示すプレゼンを意識しましょう。ストーリー性を持たせることも効果的です。
大きな目標を掲げて成長する
大きな目標を設定することで、従来の発想にとらわれず成長できます。数値目標を大きく設定し、達成のための打ち手を真剣に考えてみましょう。
仕事を呼び込む5つの習慣
- どんなに困難な仕事も歓迎する姿勢を持つ
- 言い訳をせず責任を自分に求める
- 明るく素直な態度を保つ
- 小さな約束を守る
- 目の前の仕事で101点以上を取り、印象に残す
会社員のうちからこれらの習慣を意識することで、起業後の成功につながります。
批評
良い点
本書の最大の魅力は、起業家に必要な要素を「お金・思考法・人脈・経営スキル」と多角的に整理し、実践的なアクションにまで落とし込んでいる点です。特に、家計簿を通じて収支管理を習慣化し、投資のリターンを意識して支出を判断する思考法は、起業前から鍛えられる現実的なアドバイスです。また「行動しないリスク」を考慮する重要性や、理想の未来から逆算してロードマップを作る手法は、漠然とした不安を具体的な計画に変える力を与えてくれます。さらに、顧客目線で価値を見極める習慣や、仕組み化による事業運営の効率化など、経営の本質に迫る示唆が豊富で、机上の理論にとどまらず即実践できるのが魅力です。
悪い点
一方で、内容が非常に幅広く、読者によっては情報量が多すぎると感じるかもしれません。資金管理から人脈づくり、集客戦略、プレゼン術まで網羅しているため、焦点がぼやけやすく、特定の分野を深掘りしたい人には物足りなさが残ります。また、日本の現実や法制度、資金調達環境といったローカルな課題にはほとんど触れられていないため、実際に起業を進める際の「具体的なハードル」を理解するには別の情報が必要です。さらに「経営書を読むことが大切」と述べる一方で、どの本から読むと良いかの具体例がほとんど示されない点も惜しい印象を与えます。初心者にとっては、何から始めるかが分かりづらい可能性があります。
教訓
本書が伝える最も重要な教訓は、「起業は才能やひらめきではなく、計画性と学習、そして行動によって成功確率を高められる」ということです。数字を直視する習慣を持ち、価値判断の軸を鍛え、理想から逆算して準備を積み上げれば、漠然とした恐怖をコントロールできるというメッセージは、これから挑戦する人にとって大きな励ましです。また、人脈を「将来どう関わりたいか」という視点で整理し、信頼をコツコツ積み上げることの重要性も印象的です。起業を成功に導くのは特別な天才ではなく、誠実さ・継続性・準備力であるという考え方は、多くの人に勇気を与えるでしょう。
結論
総じて本書は、起業にまつわる不安を解消し、「何から始めるべきか」を具体的に示してくれる優れた実践書です。特に、日常の延長でできる行動(家計簿、価値判断、ネットワーキング、プレゼン練習など)を通じて起業家の思考とスキルを身につけられる点が秀逸です。ただし、情報の網羅性ゆえにやや散漫な印象もあり、自分が今どの段階にいるかを意識しながら読む必要があります。起業をまだ漠然と考えている人にとっては、挑戦への心理的な壁を下げる一冊となり、すでに具体的な計画を持っている人には、チェックリストとして活用できる内容です。行動指針を探している起業志望者にとって、頼れる地図のような存在となるでしょう。