著者:山口揚平
出版社:SBクリエイティブ
出版日:2015年07月10日
成功は誰にでもできる
成功することは特別な才能がなくても可能だ。特にこれからの10年間の生き方次第で、結果は大きく変わる。成功の秘訣はただ1つ――「成功するまでやり続けること」である。
しかし、多くの人が途中で諦めてしまうのは、継続するための「仕組み」を最初に考えないからだ。
継続の鍵は「計画・実行・修正」のサイクル
たとえば健康のためにジムに通うと決意したとする。成功する人は、いきなりジム通いを始めたりはしない。なぜなら、人間の意志やモチベーションは非常に弱いからだ。
成功するには、「計画 → 実行 → 修正」というサイクルを仕組みとして作ることが必要になる。
大学受験から学ぶ成功プロセス
志望校に合格するために、ひたすら問題集を解くだけでは意味がない。まず全体の計画を立て、実行し、結果を確認して計画を修正する。この一連のプロセスが機能して初めて、日々の勉強が意味を持つ。
具体的には以下の流れだ。
- 必要な学習項目を洗い出し、時間を見積もって計画を立てる。
- 実行した結果、たとえば3割しか理解できなかったとする。
- 残り7割を習得するために、どれくらいの時間が必要かを考え、計画を修正する。
ここで大切なのは、「できなかった」と嘆くのではなく、「残りを習得するために何が必要か」を数値化・言語化することだ。
「失敗」ではなく「検証」と捉える
計画と結果が違ったとしても、それは失敗ではない。単に「検証」が行われたというだけだ。結果を見て計画を修正し、再び実行する。これを繰り返すことで成功に近づく。
多くの人が失敗するのは、たった1回うまくいかなかっただけでやめてしまうからだ。
どんなプロジェクトにも応用できる
この考え方は受験だけでなく、仕事・婚活・就職・起業・ダイエットなど、あらゆる分野に応用できる。
小さなプロジェクトをいくつも作り、「計画 → 実行 → 修正」を回しながら少しずつ成長していけば、望む結果を得られる。
成果を持続させる仕組み ― ITとコーチの活用
成功を継続させるには、ITとコーチをうまく使うことが有効だ。
- ITを使って行動を記録すると、検証がしやすくなる。
- コーチをつけると、知識と客観性を補える。
特に、すでに結果を出している人をコーチにするとよい。最初に「成果を出すまでにどのくらいの期間・時間・お金がかかるか」を質問し、コストを見積もって戦略を立てると、成果はぐっと上がりやすくなる。
日本社会の変化と個人の生き方
ニュースでは政治や経済、年金問題など悲観的な話題が多い。しかし、「個人」と「国」は別物だ。国に問題があっても、個人は自分の未来を切り開ける。
今後は、地域が特色を活かしてブランドを作り、個人がその共同体を選んで参加する時代になる。21世紀の仕事は「お金を稼ぐ」から「共同体をつくる」へとシフトしていくだろう。
広がる格差と上位層へのチャンス
21世紀のコミュニティは土地に縛られず、価値観や教養によって階層化されていく。
やがて社会は「地球市民層」「都市上位層」「都市下位層」「地方層」「非社会層」の5つに分かれると考えられている。
日本はまだ上位層へ上がるチャンスがあるが、10年以内には階層が固定化される可能性がある。
上に行くには、品位や教養など人としてのあり方を磨くことが重要だ。
これから重視される力
大企業では「柔軟性」「言語化能力」「品格と教養」が重視されてきたが、今後は特にベンチャー企業で次の力が重要になる。
- 主体性
- 創造力
- 直感力
- 学ぶ技術力
- 真摯さ・誠実さ
「タテ社会」から「ヨコ社会」への転換
日本は今、「タテ社会」から「ヨコ社会」への大きな変化の中にある。
- タテ社会:マジョリティが資源を集め、上から分配する仕組み。
- ヨコ社会:マイノリティが仲間と資源を融通し合う仕組み。
ニート、派遣労働者、LGBT、シングルマザーなど、かつて少数派だった人々が今や多数派になりつつある。
ヨコ社会では「信頼」が最大の資産になる
ヨコ社会では、国家への信用を前提とした貨幣よりも、個人への信用が重視される。お金ではなく「信頼残高」が重要な資産になるのだ。
- スキルがあればマネタイズできる。
- 信用があれば資金を調達できる(キャピタライズ)。
さらに、自分をオープンにする姿勢や、摩擦を避ける交渉力も重要だ。与えたものはめぐりめぐって返ってくる――この価値連鎖を信じることが成功の鍵になる。
人間関係は人生最大の課題
すべての悩みの根本は人間関係にある。コミュニケーションの基本は、まず相手との距離を測ることだ。
- 相手の価値観に注意を向け、理解する。
- それを言葉にできれば、苦手な相手とも距離を取りやすくなる。
うまくいかないときは、第三者の助けを借りることも有効だ。普段から人を助け、信頼を貯めておくと、困ったときに助けを求めやすくなる。
コミュニケーション力を磨く方法
- 海外に出て異文化の中で柔軟性を身につける。
- 自分と異なる人に興味を持ち、勇気をもって飛び込む。
- モデルにしたい師匠(マスター)や、助けてくれる先輩(メンター)を見つける。
世界には、「人生は最低だ」から「人生は素晴らしい」まで、5段階の自己評価を持つ人がいる。
たとえ今が「最低」だと感じても、計画・実行・修正のサイクルを繰り返せば前に進める。
自己評価を取り戻す旅に出よう
人生のテーマはただ1つ――「こじらせた自己評価をマイナスからゼロまで戻すこと」だ。
お金がない、レールから外れたなど、自分を否定する理由はいくらでもあるが、その恐怖と向き合う勇気を持とう。外の世界で貢献し自信を得ると同時に、自分の内側を掘り下げていくことが大切だ。
自分が嫌いなタイプの人は、実は自分自身の一部である。その存在を受け入れることで、自分を認められるようになる。
人生は「何もしなくても価値がある」
人生に「必ずしなければならないこと」などない。まずは自分の存在そのものに価値があると認めるところから始まる。
愛と夢を持ち、一歩を踏み出そう。
10年後、あなたは必ず成功できるはずだ。
批評
良い点
本書の最大の魅力は、「成功するまでやり続ける」ための具体的な方法論を示している点にある。単に根性論や精神論に頼らず、「計画・実行・修正」というサイクルを軸に据えた現実的なアプローチは説得力がある。特に、勉強やダイエット、起業など、幅広い分野に応用できることを豊富な例で説明しているのが印象的だ。また、ITツールの活用やコーチの存在を取り入れることで、個人の努力を仕組み化しやすくする点も現代的で実践的だと感じる。さらに、日本社会の変化を「タテ社会」から「ヨコ社会」への転換として描き、経済や信頼の在り方が変わっていく未来像を提示しているのは刺激的であり、読者に行動の方向性を与える。
悪い点
一方で、内容はやや盛り込み過ぎで焦点が散漫になる印象を受ける。前半では「成功のための仕組みづくり」に重点を置いているが、後半になると社会構造論や階層化の話、コミュニケーション論、自己肯定感の回復などへと論点が広がりすぎている。結果として、読者がどの部分を実践すべきか迷う可能性がある。また、社会や未来の階層化についての言及は刺激的だが、やや断定的でデータや根拠の裏付けが弱い箇所も見受けられる。特に「10年以内に階層の蓋が閉じる」という警告は、具体的な社会的要因が十分に説明されていないため、危機感をあおるだけに感じられる部分がある。
教訓
本書から得られる最大の教訓は、「成功は偶然ではなく、意図的な改善の積み重ねによって到達できる」という点だ。意志やモチベーションといった一時的な感情に頼るのではなく、計画し、実行し、結果を検証して修正する。この仕組みを回し続けることが成功の本質だと気づかされる。また、今後の社会では資本よりも「信用」や「つながり」が重要になるという指摘も、働き方や人間関係の築き方を考える上で有益だ。加えて、自分を否定する恐れと向き合い、自己評価を少しずつ回復していくことの重要性は、多くの人にとって人生の指針になるだろう。
結論
総じて本書は、個人がこれからの不確実な時代を生き抜くための「思考法と実践法」をまとめた包括的なガイドである。成功を目指すうえでの現実的なプロセスと、社会の大きな変化に対応するための価値観のシフトが提示されており、読む者に前向きな行動を促す力がある。一方で、テーマの広がりが大きいため、読者はすべてを一度に実行しようとするのではなく、自分にとって最も重要な要素――例えば「計画・実行・修正」の習慣化や信用を築く行動――に焦点を絞るべきだろう。そうすれば本書は、人生を戦略的にデザインし直すための有益な道しるべとなる。