著者:菅井敏之
出版社:きずな出版
出版日:2015年08月10日
信頼残高が人生を左右する
「信頼残高」がどれだけあるかで、人生は大きく変わります。
やりたいことがあるとき、信頼残高が高い人は周囲から賛同や応援を得やすいですが、信頼残高が低い人は思うように進められません。
信頼残高は一朝一夕で増えるものではありませんが、家族や仲間を幸せにしたいと願い、日々の小さな出来事を大切にし、感謝を伝えることで少しずつ積み上がっていきます。
信頼残高はお金の使い方にも表れる
銀行員は融資をする際、その人が収入に見合った貯金をしているかを確認します。
堅実な人は手取りの15〜20%を貯金しており、それほど高収入でなくても堅実にお金を管理できる人は信頼残高が高いと見なされます。
名刺はシンプルが一番
肩書きや職種をたくさん載せたり、夢や理念をアピールする「夢言葉」を入れたりする名刺は、かえって信用を失う原因になります。
名刺はシンプルであるほど信頼されやすく、特に起業家やフリーランスは名刺づくりからすでに信頼構築が始まっていると考えましょう。
知識のある人ほどわかりやすく話す
本当に知識や経験のある人は、横文字や専門用語を多用せず、シンプルな言葉で本質を伝えられます。
難しい言葉より、誰にでもわかる言葉で話す人のほうが評価されます。
本当のお金持ちは見栄を張らない
真のお金持ちや自信のある人は、見栄のためにお金を使いません。
価値あるものにだけ投資し、無理な借金や浪費を避けます。
逆に見栄を張って高額な支出を重ね、借金を抱えてしまう人は少なくありません。
年収800万〜1200万円層の落とし穴
著者が特に危険だと指摘するのは、年収800万〜1200万円層です。
住宅・教育・車・生命保険といった「四大支出」にお金をかけすぎ、タワーマンションや私立学校など高級志向に陥ることで家計が破綻しやすくなります。
一方、年収500万円前後の人は堅実な生活を選び、貯金を重ねているケースが多いといいます。
お金が足りないときにやってはいけないこと
カードローンでの穴埋めは転落の始まりです。
「もっと稼ごう」と危険な投資に手を出したり、うまい不動産話に乗って破綻する人もいます。
まずは支出を見直し、年収の3割を貯める習慣をつけることが大切です。
自分の運を過信せず、感謝と謙虚さを忘れないようにしましょう。
経営者に必要な信頼の姿勢
経営者の中には自分を特別視し、上にはお世辞を言い、下には横柄な態度をとる人がいます。
しかし、お世辞だけでは本気の場面で信頼されません。
人から信用されるには、自分自身がどんな人を信用するかを基準に考えるとよいでしょう。
銀行が重視するのは「過去の実績」
銀行に融資を求めるとき、多くの人は「これからの可能性」を語りますが、銀行が見たいのは過去の実績です。
決算が赤字続きの人にお金を貸したい人はいません。
まずは実績を積み重ねることが、未来の信頼につながります。
信頼残高を高めるために大切なこと
- 信頼残高の高い人と付き合う
- 虚勢を張らず、責任を自覚して行動する
- お金の流れを数字で把握する
とくに、家計簿をつけて収支を管理し、自分の資産と負債を理解することが重要です。
自分の人生は自分が社長だと思い、月に一度は「P/L(損益計算書)」と「B/S(貸借対照表)」を見直しましょう。
信用を積み上げる銀行との付き合い方
独立を考える人は、メガバンクよりも信用金庫を活用するのがおすすめです。
早いうちから信用金庫に口座を開き、自動積立をすることで、地元での信用を築くことができます。
良い借金と悪い借金を区別する
借金は一概に悪いものではありません。
アパート経営など収入を生む借金は「良い借金」ですが、車のローンのようにお金を生まない借金は「悪い借金」です。
この違いを理解しておくことが重要です。
若いうちに増やしたい「無形資産」
能力、技術、知識、人脈など、形のない資産は将来の大きな助けになります。
勤務年数の長さや業界内の一貫性も信用につながります。
また、時間を守る、態度を変えない、虚勢を張らないなどの「仕振り」の良さは、数字に表れない信頼の証です。
Win-Winの関係を意識する
相手に貢献できることを見つけ、Win-Winの関係を築くことが大切です。
信頼は人脈を広げ、新たなチャンスを生みます。
自分の人生を経営する
誰もが何かしらの看板を背負っています。
自分の本分を自覚し、責任を果たすことが信頼につながります。
もし「こんなはずじゃなかった」と感じているなら、自分が自分の人生の経営者であることを意識し、数字を把握することで未来を変えられます。
自分を信じて動き出そう
「自分には何もない」と感じる人も、必ず無形資産を持っています。
失敗を恐れず、少しの勇気を持って挑戦しましょう。
まずは自分自身を信頼することから始めることが大切です。
失敗を恐れず成長する
失敗は誰の人生にもありますが、言い訳や正当化ではなく、受け止めることが成長につながります。
自分を責めすぎる必要はありませんが、過ちを認める勇気を持つことが重要です。
批評
良い点
本書の最大の魅力は、「信頼残高」という一見抽象的な概念を、非常に具体的な行動指針に落とし込んでいる点だ。単なる人間関係のアドバイスではなく、家計管理や名刺の作り方、起業準備や融資の受け方まで、生活と仕事の両面にわたって実践的なヒントを与えてくれる。たとえば、日常の感謝を言葉にする、肩書を盛りすぎない、数字で自分の実績を語る、といった小さな習慣の積み重ねが信頼を築くことを具体例とともに説明しており、読者が「今日からできること」を見つけやすい。また、金融の世界で働いていた著者ならではの視点が随所にあり、預金残高や信用金庫の活用法、良い借金と悪い借金の区別など、一般的な自己啓発書にはないリアリティが加わっている。
悪い点
一方で、本書にはやや説教臭さがあり、読者によっては反発を感じる可能性がある。特に「年収800〜1200万円層は危険」といった断定的な表現や、「見栄を張る人=信用できない」という価値観の押し付けは、個々の状況を軽視しているようにも読める。また、金融リテラシーやビジネス経験の少ない人にとっては専門用語や会計的な説明がやや難解に感じられるかもしれない。さらに、成功例や失敗例が具体的な人物像として描かれていないため、読者が自分事としてイメージしにくい部分もある。信頼残高の重要性を強調するあまり、失敗した人をやや上から目線で語っている印象も残る。
教訓
本書から得られる最大の教訓は、信頼は「誠実さ」と「数字の裏付け」で築かれるということだ。人間関係の土台は日々の小さな約束や態度の積み重ねにあり、時間を守る、態度を変えない、相手の立場を尊重するなどの基本が信用の根になる。また、ビジネスにおいては感情的な夢やパッションだけではなく、収支や資産を管理し、自分の成果を数字で説明できることが不可欠だと示されている。加えて、「信頼残高の高い人と付き合う」ことが自己成長の近道になるという人間関係論も印象的だ。無形資産を若いうちから積み上げることや、見栄より堅実さを優先することが、長い人生を安定させる鍵だと教えている。
結論
本書は、単なる自己啓発や成功哲学にとどまらず、金融知識と人間関係の築き方を融合させた実用的な指南書である。やや断定的で厳しめの語り口は好き嫌いが分かれるが、著者の豊富な銀行員経験に裏打ちされたリアルな助言には説得力がある。「信頼残高」という概念はシンプルだが、家庭や仕事、資産形成、起業といった幅広い分野で応用できる強力な思考の軸になるだろう。もし今の自分の生き方に不安や迷いがあるなら、まずは小さな約束を守り、感謝を伝え、数字で現実を直視するところから始めるべきだ。本書は、地に足のついた信頼の築き方を学び、人生を主体的に舵取りするための良き指針となる。