著者:白藤香
出版社:総合法令出版
出版日:2015年09月05日
世界で活躍するビジネスパーソンに求められる英語力
世界で活躍するビジネスパーソンは、英語を流暢に話せることが当たり前とされています。英語ができないと見下されることもあります。モデルで女優の杏さんは米・仏進出を振り返り、「フランス語は死なない程度に話せます」と語っています。ここでいう“死なない程度”とは、挨拶や5W1Hを使った基本的な会話レベルを指します。
英語力を鍛える方法
基礎的な英語力を身につけるには、ビジネス誌を定期購読して音読しながら読むことが効果的です。継続的に読むことで、語彙力や表現力が自然と鍛えられます。
海外での職業意識の違い
日本人は「会社員」と答えがちですが、海外のビジネスパーソンは「経営コンサルタント」など具体的な職業名を答えます。個人としての専門性や職業意識が重要視されるのです。
市場価値を高めるキャリアの築き方
市場価値を高めるには、「プロフィットセンター」での経験が重要です。マーケティングやセールスなど、収益に直結する部門での経験が求められます。もしそうでない部署にいる場合は、大学の夜間コースなどで専門知識を磨くことも有効です。
海外企業での成果重視の評価
日本では「努力」も評価されますが、海外では成果がすべてです。プロセスよりも結果が重視され、成果を自ら取りに行く主体性が求められます。
論理的思考とデータでの裏付け
欧米では曖昧な説明は好まれず、論理的な説明や数字での裏付けが重要です。シミュレーションの結果やデータをもとに、説得力のある説明ができるように訓練しましょう。
生きた情報を得る重要性
ニュースやインターネットだけでなく、現地の人と直接会話して「生の情報」を得ることが大切です。空港の待合室などで話しかけることで、各国の経済状況や文化を知る機会が得られます。
会話のきっかけを増やす工夫
株価やスポーツ、家族の話など、会話を弾ませる話題を持っておくとビジネスがスムーズになります。
欧米式の論理的な伝え方
日本の「起承転結」ではなく、欧米では「目的→理由→結論」の順で話すのが一般的です。帰納法や演繹法を使い、まず目的を明確に伝える習慣を身につけましょう。
商談・交渉を成功させる事前準備
商談や交渉は「事前準備が9割」です。相手の出方を想定し、交渉ポイントをまとめたアジェンダを用意しましょう。時間内に結論を出すことも重要です。
時間を意識した計画の立て方
海外では期限内に目標を達成することが前提です。目標達成までの具体的な方法を考え、上司と合意を取って計画を実現可能なものにしましょう。
数字を使った説得力あるプレゼン
プレゼンでは目的を明確にし、数字で効果を示しましょう。例えば、「業務時間を毎日10分短縮すると年間792ドルのコスト削減になる」といった具体例が有効です。
地理・歴史の知識を持つ重要性
第二次世界大戦やその後の世界情勢を理解しておくことは、国際的なビジネスで役立ちます。例えば、オーストラリアの反日感情の背景を知っておくと、トラブルを避けられます。
日本文化を理解しておく意義
茶道、生け花、相撲、禅など、日本文化は海外でも人気です。日本人として説明できる知識を持っておくと、会話の幅が広がります。
経済知識を身につける
『フィナンシャル・タイムズ』や『エコノミスト』などを読んで世界経済を学びましょう。ファストフード店の価格差からも物価や為替動向を読み取れます。
宗教・文化の多様性を理解する
海外では多様な民族・宗教の人々と働きます。ヒンズー教徒は牛肉を食べず、イスラム教徒やユダヤ教徒は豚肉を避けます。祈りや祝日などの文化に配慮することが大切です。
上司の役割と部下の成長支援
海外では上司は「部下の成果を引き出す」責任を持ちます。部下の相談に乗り、課題を整理し、成果につながる方向へ導きましょう。努力しても成果が出ない場合は上司の責任とされます。
海外赴任でのメンタルケア
海外では環境の変化によるストレスが大きくなります。上司は部下が孤立しないよう対話を重ね、ストレス解消のサポートや帰国の配慮をすることが重要です。
世界でのマナーとタブーを理解する
アメリカ
レポートラインを無視した報告はタブーです。企画を提案する際は、数字で相手の利益を示すことが必要です。
中国
昇給や条件交渉で強く要求されることがありますが、理路整然と対応すれば理解してもらえます。
インド
質問を繰り返す傾向がありますが、頭の回転が速く戦略的です。時間がかかっても納得感を重視しましょう。
東南アジア
控えめでコツコツ働く人が多い一方、中東では契約概念が弱く、交渉は文書で進めることが大切です。
批評
良い点
本書の最大の強みは、グローバルビジネスの現場で即実践できる具体的なアドバイスが豊富である点です。単に「英語を学べ」と抽象的に説くのではなく、ビジネス誌を音読する習慣づくりや、数字を使った説得力のあるプレゼン手法など、すぐに取り入れられる学習・実践の方法が示されています。また、成果主義が徹底される海外企業の評価制度、論理的なコミュニケーションの必要性、各国の文化的背景や宗教的慣習への配慮など、グローバルな職場で直面しやすい課題を体系的に解説しているのも魅力です。特に、商談や交渉の事前準備を「9割」と位置づけ、具体的なアジェンダづくりやシミュレーションの重要性を説く点は、実務家にとって説得力があります。
悪い点
一方で、本書は全体的に「欧米型の働き方」を成功の前提としており、やや一面的な印象を受けます。英語力を持たない者は見下されると断定的に語るなど、国際社会の多様性や、非英語圏の専門人材が評価されるケースへの考慮が薄いように感じます。また、提示される方法論がハイキャリアのエリート層を想定しているように見える部分もあり、すべてのビジネスパーソンにとって現実的とは限りません。例えば、「プロフィットセンターでの経験が必須」という主張は、業種や職種によって実現が難しい場合もあるでしょう。さらに、文化的な一般化もややステレオタイプ的で、国や地域ごとの差異を単純化しすぎている印象があります。
教訓
本書から得られる重要な教訓は、グローバルな舞台で活躍するには「主体性」と「論理性」が欠かせないということです。海外で評価されるのは努力ではなく成果であり、その成果を裏付ける数字やデータを活用することが信頼を得る鍵となります。また、異文化への理解と柔軟な適応力も不可欠です。宗教や習慣の違いを知り、相手が快適に働ける環境をつくる姿勢は、国際的なリーダーに求められる重要な資質でしょう。さらに、自分の市場価値を高めるためには受動的に組織に頼るのではなく、自ら学び、キャリアをデザインする姿勢が必要であることを強く教えてくれます。
結論
総じて本書は、海外でキャリアを築きたいビジネスパーソンにとって有益な「実践ガイド」と言えます。とりわけ、論理的なプレゼンの構造、事前準備の徹底、数字を用いた説得の重要性は、国境を越えて通用する普遍的なスキルでしょう。ただし、やや「グローバル=欧米」という前提や、英語至上主義的な視点が強い点は批判的に受け止める必要があります。読者は本書を鵜呑みにするのではなく、自身の業界やキャリア段階に合わせて取捨選択しながら取り入れることが求められます。そのうえで、主体的に学び続ける姿勢と異文化への深い理解を持てば、世界のどこでも通用するビジネスパーソンへの道が開けるでしょう。