著者:チームうまい棒、株式会社やおきん協力
出版社:日本実業出版社
出版日:2014年09月30日
みんなが好きなうまい棒の味
人気トップ3は「めんたい味」「チーズ味」「コーンポタージュ味」。特に子どもには「コーンポタージュ味」が大人気です。
うまい棒の種類が増えた理由
発売当初は種類を増やす予定はなかったものの、売上の波に対応するために多彩な味が生まれました。機械をフル稼働させる工夫から、現在では18種類が展開されています。
個性的なフレーバーの誕生秘話
「シュガーラスク味」や「牛タン塩味」など個性豊かな味があり、開発のきっかけは日常のひらめきによることもあります。
「10円」を守り続ける努力
発売から35年、原材料や税の値上げにも負けず、10円価格を維持。コスト削減だけでなく、品質向上に必要な投資も惜しみません。
パッケージに込められた楽しさ
うまい棒は味だけでなくパッケージも魅力のひとつ。3種類のセリフが印刷された「てりやきバーガー味」など、遊び心あふれる工夫があります。
キャラクターが広げる世界
パッケージのキャラクター「うまえもん(仮)」は、LINEスタンプやぬいぐるみなどにも展開。宣伝やライセンス収入にもつながっています。
駄菓子の歴史と発展
「駄菓子」の「駄」には粗末という意味があります。江戸後期から庶民のお菓子として広まり、戦後には黄金時代を迎えました。その流れで昭和54年にうまい棒も誕生しました。
問屋が支えた駄菓子文化
戦後、全国に広まったのは問屋のおかげ。旅問屋が小さな店まで駄菓子を届け、流通を支えました。
駄菓子が社会で果たす役割
駄菓子は世代をつなぐ存在であり、認知症予防や被災地支援にも活用されています。これからも多様な場面で活躍が期待されます。
批評
良い点
本書の最大の魅力は、うまい棒という一見身近で庶民的なお菓子を題材にしながら、そこに込められた企業哲学や経営の工夫を丁寧に掘り下げている点である。単なる商品紹介にとどまらず、開発背景やコスト管理の裏側、さらには駄菓子文化そのものの歴史まで視野を広げることで、読者にとって「うまい棒」がいかに社会的意義を持つ存在であるかを再発見させる。特に「10円を守り続ける」というやおきんの姿勢は、時代の荒波を受けながらも顧客との信頼関係を優先してきた企業精神を象徴しており、読後感に清々しさを残す。
悪い点
一方で、叙述のトーンがやや一貫性に欠け、語り手「うまえもん(仮)」による軽妙な挿話が多く差し込まれることで、読者によっては真剣な経営論や文化論が希薄化している印象を受けかねない。また、紹介されるエピソードの多くが成功例で占められており、失敗や苦境への具体的な掘り下げは薄い。結果として、全体がやや美談に寄りすぎ、経営論的な厚みや批判的視点に欠けている点は惜しい。また、駄菓子文化全般に触れる部分では、情報量が豊富であるがゆえに「うまい棒」という主題から一時的に逸れてしまう瞬間があり、構成上の焦点がややぼやけてしまう。
教訓
本書から得られる最も大きな教訓は、「小さな価格に大きな価値を込める」という発想である。10円という普遍的な価格を守るために、ただコスト削減に走るのではなく、むしろ品質向上のために投資を惜しまない姿勢は、短期的利益よりも長期的な顧客満足を優先する商売の王道を体現している。また、失敗を恐れず多様なフレーバーを市場に投じる柔軟さや、キャラクター戦略によって商品を文化的存在にまで高めた工夫は、現代のビジネスにおいても通用する普遍的なヒントである。さらに、駄菓子が子どもから高齢者まで世代を超えて人を結びつけ、記憶や感情を呼び起こす「社会的装置」として機能することは、消費行動の背後に潜む人間的欲求の本質を示している。
結論
総じて本書は、うまい棒という庶民的なお菓子を通じて、日本の食文化・流通の歴史、そして中小企業の知恵と戦略を鮮やかに描き出した一冊である。その語り口は軽快で、専門知識がなくとも楽しめる一方、経営学や文化研究の観点から読んでも示唆に富む内容を含んでいる。確かに批判的な分析は薄いものの、うまい棒の歩みを「社会とともに育った小さな巨人」の物語として描いた点は評価に値する。10円に宿る哲学は、日常の中の当たり前にこそ革新の余地が潜んでいることを教えてくれるだろう。本書は、懐かしさを喚起しつつ未来への視座を与える、軽妙かつ奥深い批評的読み物である。